昔話をしようと思う。
懐かしくも何ともないけれど。
そんな気分になったから。
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物語っぽいようなお話。
たまに日記が混ざっているけれど、そこは気にしない方向で(笑)
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私は本が好きだ。
そのなかに潜んでいる『物語』が好きだ。
文芸部に入っている時点で、『文学少女』と呼んでもいいのかもしれない。
けれど私の中の『文学少女』のイメージは、残念ながら『私』ではない。
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なんだか空いた時間が物足りなくて。
最近不足していた『活字』がほしくなった。
正確に言うと『物語』の不足なのだが。
このさい、細かいことはどうでもいい。
違う世界を垣間見れるのなら、なんだっていいのだ。
静かな店内。
本に囲まれて、お目当ての本を見つけたとき。
偶然、後輩らしき人物と目が合った。
「あれ。先輩?…学校は?」
「ふけた」
「…またですか。出席日数足りなくなっても知りませんよ」
「そんなミスはしない。ちゃんと計算して休んでる」
「どーだか。『算数』でつまずく先輩が『ちゃんと計算』できているっていう時点で終わっている気がしますがね」
「てめぇ、相変わらず生意気だな。オイ」
「先輩こそ口が悪くなってますよ。普段は大人しいのに」
「普段から口は悪いわ!喧嘩売ってんのか?」
「先輩ごときに売る喧嘩が見つかりません」
「ごとき?!…くっそぅ。その素直すぎる口をもっとこう、オブラートにはできないの?」
「ああ。すみません。俺、勝つと解っている相手に喧嘩を売るほど愚かではないので。…とかで良いですか?」
「なお悪いわ!って、そっちこそなんでここに?学校は?」
「自主早退してきました。具合が悪くなる予定なので」
「予定かよ!…まぁいいけどさ。暇なら本買って。貸せ。借りパクしてやる」
「…素直に『本を買ってください』って言えばいいじゃないですか。まどろっこしい」
「………………財布を忘れたみたいでな」
ごそごそと鞄をあさる。
「うん。やっぱりない」
自信満々に頷くと。
思いっきり冷たい視線が刺さった。
「バカだろ。アンタ」
わざとらしいオーバーリアクション。
盛大につかれた溜息に少々腹が立って、さり気なく弁慶の泣き所を狙う。
「うっさいわ、ボケ!忘れてきたもんはしょうがないだろ」
手馴れた動作で素早く避けられた足。
くそぅ!
「帰ればいいじゃないですか」
面倒くさそうな視線が私を追いやる。
おそらくこれは、軽蔑なのだろう。
本気で面倒くさがっている。
「いやだ。今欲しい」
「だから買え、と?」
「うん」
「本当に正真正銘のバカですね。そこまでバカになれるなんて、逆に尊敬します」
呆れた後輩の視線に蝕まれつつ、私は一心に彼を見た。
「ずっと欲しかったんだよ。一年ぶりの新刊だぞ?今日までずっとずぅっと待ってたんだ!夜も眠れず365日、この日を待ちわびて、学校に行かないくらい!」
「この間、授業中に爆睡して職員室に呼び出された人が言わないでください。
この場合『行かないくらい』じゃなくって『行けないくらい』の方がいいと思いますよ?
どちらにせよ『学校に来い』しか出てきませんが」
「~~~~かっわいくない!なんでいつもそう、可愛げがないかなぁ。
せっかくのベビーフェイスが台無しだよ?もったいない。もったいなさすぎる…」
「アンタ、帰れ!」
怒鳴り声。
苛立つ声音。
無意識に身体が固まるほど真剣に怒鳴られて。
さすがの私も反省した。
「うぉっと…ごめん。ベビーフェイスじゃなかった。男前だよ。すまん。今のは私が悪かった。
…ごめんね」
返事がない。
「ごめん。…ごめんなさい」
頭を下げても。
やっぱり無言で。
「…ベビーフェイス。私は好きなんだが…」
重苦しい沈黙が私を潰す。
「………これでも一応、ほめたつもりなんだ」
そっと顔を窺う。
「ごめんな?」
目が合った。
盛大に吐かれる溜息。
「…もういいです。そういうことされると、俺が悪者みたいじゃないですか」
もう一度、溜息をつかれて、ちょっと不安になる。
「怒ってない?」
「アンタがバカだってことがよ~く解りました」
「なんだそれ?!」
「先輩は言葉の使い方が成っていません。仮にも文芸部に所属しているくせに、構成力が皆無です」
「私は読み専門なんだよ」
お前さんと違ってな。とは言わないでおいた。
「知ってます。『本の虫』なんでしょう?」
「読んでないと栄養失調で倒れる気がするんだ」
「倒れませんって。…本当に、バカですね」
「そんなにしみじみ言わなくても…」
解っている。
そんなことは在りえないと。
だが。
「私が『わたし』であるためには必要なことだよ」
「…だから、バカだって言っているんです」
困ったようにくしゃりと後輩の顔が崩れる。
「これは、俺が買います」
さっき見つけた、お目当ての本。
もしや、貸してくれるのか?!と目を輝かせると。
「貸しませんけどね」
バッサリと切られた。
「まだ何も言ってない」
何で解ったんだ。
ちくしょう。
けちんぼめ。
「そんな顔してもダメです」
「絶対?」
「貸しませんし、あげません」
「…いじわる」
「ったく。アンタって人は…」
また、溜息。
「せっかく『休日』を作ったんです。ちゃんと休んでください。
自主的とはいえ、休みは休み。いい加減、本離れしないと後が辛くなりますよ?」
「でも」
「『物語』が聞きたいなら、俺が読んであげますから」
「…読み聞かせ?え?いいの?!」
「求めるものが『活字』なら、別ですけど」
「ううん。『物語』がいい。…お言葉に甘えて、よろしくお願いします」
「よろしくされてやります」
「うん!やったー!ありがとー!」
「あ。でも、今日は用事があるんで無理です」
「はぁ?!なんだそりゃ。ひっどーい!期待させておいて、私を捨てるのね!」
「そうですね。んじゃ」
「わわわ!ちょっと。待て!待ってって言ってるだろ!待てや!ボケェ!!」
颯爽とレジに向かう後輩を引きとめようと服を掴む。
「邪魔です」
素敵な笑顔で手を剥がされ。
コイツは悪びれた様子もなく会計を。
「そんなに読みたいのなら、先輩は違う『物語』を探してください。
これ、は俺のです」
悔しそうな私を見て、彼は満足気に手を振った。
実は俺もこの新刊ずっと待ってたんですよね。と。
いたずらな笑みを残して。
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…昔話にまで辿り着かなかった…!!(ショック)
書いていたら予定外な道を辿りやがったぜ…(ふ…)
もう少し中二病的な昔話を書こうと思っていたのに(ぇ/笑)
明るい方向に行ってしまいました(いや、いいんだけどw)
続けるとすごく長くなりそうな気がするので、ここで止めておきます(笑)
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『ゴーストハント』も入れるつもりだったのになぁ…。
くそぅ。
次はがんばるぞ!
続きを書く気になったら(なるかなぁ?)
もう少しお話を展開させていきたいです♪
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