「あたし、諦めませんから」
校庭裏に凛とした声が響く。
それは明らかな宣戦布告だった。
だけど、
これだけは譲れない。
離れて行く後ろ姿を見ながらそっと手を握り締めた。
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「…うん」
でも、でもね。
好きだったんだよ。
そう、か細く呟くと
「知ってる」
ため息と共に言葉が降ってきた。
「ケイ」
「ぁん?」
「恋って難しいね」
あはは。
乾いた笑いが室内に響くとケイは顔をしかめ私に手を伸ばす。
「俺の前でンな顔すんな」
こつんと額をくっつけられ、視界がケイでうまる。
あぁ、なんて贅沢なんだろう。
頭の隅の冷静な私が他人ごとのようにそう呟いた。
+++
ふと廊下を見るとケイの彼女が窓の外から未来に睨みをきかせていた。
…怖っ。
「侑史。私はあんな風になりたくないわけ」
解るでしょう?
目線で問いかければ当然のように是と返ってくるのに。
「…だったら、私じゃなくて彼女を構いなさい」
小声で話す様は一見異様なようで雑音の響く教室には意外にもなじんでいた。
「そう心配せんでも、ずいぶん前に彼女とは別れた」
「あ、そうなんだ」
じゃいっか。
あっさりと私が頷くと優しい顔をして侑史が笑った。
「相変わらずやなぁ千里は」
「そうかぁ?」
ぼそりと私が呟く。
+++
赤く染まった机と床。漂う香りはただ甘く。
焼き付くような紅の中、見慣れない人影は優美に佇んでいた。
何をしているの。とか。
あなたは誰。とか。
聞きたいことは沢山あったけれど、言葉になる前に霧散した。
だって、紅を纏う、その姿はまるで
「死神みたい」
無意識のうちにポツリとこぼれた言葉に驚き、私は慌てて口を押さえた。
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小話。(笑)
別名:小説になりそこなったモノたち。のことである。
ちょっと、アレ?!って思った方。ぜひお友達になってください(大爆笑)
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「・・・あれ?」
見慣れた光景。
見慣れた情景。
揺れる空気。
騒がしい校庭。
ボールの音。
甲高い声。
どれもこれも、欠けてはならない放課後を形成するピースたち。
いつもと変わらない。
変わらない放課後がそこにあって。
窓から覗く風景もなんら変わりないはずなのに。
「・・・・・・ど、して」
どうして、足りない、などと思うのだろう。
いつもと同じ放課後なのに。
いつも通りの放課後なのに。
どうして、こんなにも―――・・・。
それは、月が空にあけた穴のように、ポッカリと。
ゆっくりと しっとりと 静かに 穏やかに 優しく 冷たく、私の中に。
私を蝕むかのように。ドロリドロリと這入りこむ。
「・・・私は、私だ」
+++
「オマエ、何を見た」
「・・・・」
「言え!」
「・・・孤高の王みたい」
+++
「ね、塚先輩。悪くない話でしょう?」
「ちょっと待て。だからと言って校内全体を巻き込むのは・・・」
「大丈夫♪先生方や全校生徒のご理解とご協力を得るのなんて容易いことです。
―――なんたって天下無敵の生徒会長様が仰るんですから」
ね?と悪戯心を含んだ穏やかな笑顔を塚先輩に向けた。
「・・・無理はするなよ」
さすがに女子生徒の怖さを解っているのか、あまり賛成はしかねるが仕方がないなという感じで塚先輩が眉間に皺をよせて言った。
「勿論。じゃあ早速、準備してきますね」
塚先輩の忠告を有り難く思いながら、生徒会室を後にした。
そう、勿論、無理はしない。
少なくとも私は。
+++
小話はムダにあるw
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