× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 短編小説です。 +++ 眠りにつくことを恐れないで。 そう貴方は言った。 柔らかな笑顔を私に向けて、夜を眺める私の髪を優しく撫でながら。 だけど、そんな言葉は聞きたくない。 恐れないでいられたら、私はとっくに眠れているの。 子供騙しな言葉で取り繕うのはやめて。 私は優しい嘘や夢みたいな奇麗事なんて要らないの。 欲しくない。 ここにいるから。ずっと、側にいるから。 優しさで嘘を重ねないで。 できない約束なんて虚しいだけ。できもしないと解っているのに、約束なんてしないでよ。 …泣きたくなるから。 夜が怖い。夜明けが怖い。眠るのが怖い。明日が怖い。 今日は生きられた。 けど、明日は? どうして朝日は昇ってしまうの。 今日は今日のままで留まってくれればいいのに。 明日になんかならないで。 私はいつまで生きられる? 眠ってしまったら、目覚めないかもしれないじゃない。 そしたら皆消えちゃうわ。 皆にとっては私がいなくなるんだろうけど。 私にとっては皆が消えるの。 だって私だけ今日に取り残されたまま。 皆は明日へ行っちゃうんでしょう? 私がそう呟くと 決まって貴方はこう言うよね。 僕が起こしてあげるから。ゆっくりおやすみ。 僕がちゃんと明日へ連れて行くよ。 と。 それを聞いていつも私は思うんだ。 眠りにつくのが私でよかった。と。 数ヵ月後の病室を想像しながら。 息絶える私に泣きながら微笑む貴方。 きっと貴方は私の手をとって、大丈夫だと、まだ死なない、頑張れ、と言うのでしょう。 誰かが私を可哀想だといったけれど、私はそんなに可哀想かしら? 最後の最期まで貴方が看取ってくれるというのに。 奇麗事は嫌い。 嘘や励ましで病気が治るのなら聞いてあげてもいいけれど。 ―――なぜかしら。 貴方に言われるのは嫌じゃない。 そして私は瞳を閉じる。 貴方の優しさに包まれて眠りにつくことができるのなら、 眠るのも悪くないわ。 PR COMMENT COMMENT FORM
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