片思いの人に捧げる一品。

（ぇ／笑）

＋＋＋

「私だって、アンタのこと好きなのに！」

バンッと扉を叩き開いて、あいつは教室から出て行った。
脳がその言葉を理解できずに、おれの思考は固まって。

「…っ！待てよっ！」

一瞬の遅れののち、足を強く踏み出した。

「―――追ってどうすんの？」

途端、腕をつかまれる。
いつもからは考えられないくらい強く、強く。
低く窘めるかのような声音が妙に腹立たしく、振り払おうとした腕はビクともしなかった。

「受け入れられないなら。期待させるようなことすんな」

怖いくらいに真剣な眼差しがおれを射る。

「じゃあ、どうしろって…！」

好きとか言われても意味解んねぇし。
いきなり。そんな。
けど、あいつは友達で。
泣いてて！

追わないといけない気がした。
だけど、追ってはいけない気もした。

トラはぐしゃっとおれの頭を掻き混ぜて、ふぅっと紫煙を噴出す。
胸ポケットから出した携帯灰皿に煙草を入れて、ダルそうに頭をかく。

「・・・俺が行く」

おまえが行って何になるんだよ。って、小さく口からこぼれでて。
おれは自分の情けなさに涙腺が緩んだ。

「―――先に行ってる」

ふっとトラの瞳が細く笑って。
教室の扉に吸い込まれるように走り行く。

「意味、わかんねぇ・・・っ！」

苛立つ気持ちを吐き出すかのごとく机を蹴り、壁を叩く。
ダンッと壁が悲鳴をあげて、おれはギリッと拳を握った。

＋＋＋

「・・・ったく、不器用な奴等」

と、廊下を走るトラの先。

意地っ張りな女の子が１人。
教室には、何かを決めたかのようにその後を追う、１人の青年が―――…。